(2020年1月23日作成)(2024年6月3日再編集)
結論
・弊所は、上野光夫「事業計画書は1枚にまとめなさい」(2019年第2刷)p206-207に記述している、日本政策金融公庫が公開している売上高等の計算方法についてという参考資料は、顧客数の視点が欠如しているという意見に同意します。
・中嶋政雄書籍についても、客数について言及されているため、同意します。
・その他の書籍は、日本政策金融公庫が公開している売上高等の計算方法についてという参考資料の考え方に同意しているように解されます。
・ネット記事の多くも、日本政策金融公庫が公開している売上高等の計算方法についてという参考資料の考え方に同意しているように解されます。
・予測売上高の決定方法は、客単価×客数というシンプルなものと解されます。
・しかしさらに弊所独自の視点として「その客数がなぜその客数なのか」を証明すべきという考えを有しています。
下記で詳細を記述します。
事業の見通しの売上高を決定する方法について日本政策金融公庫が公式に売上高等の計算方法についてという資料を公開しています
事業の見通しの売上高を決定する方法について日本政策金融公庫が公式に売上高等の計算方法についてという資料を公開しています。
売上高の計算方法について
業種の特性を考え、最も適した方法を選び、他の方法もあわせて検討してみましょう。また、業界平均に地域事情などを考慮するなどして多角的に売上高を予測することが大切です。
(1) 設備が直接売上に結びつき、設備単位当たりの生産能力がとらえやすい業種
(部品製造業、印刷業、運送業など)
〈算式〉 設備の生産能力 × 設備数
[例1] 業種:部品(ボルト)製造業
・旋盤 2台
・1台当たりの生産能力 1日(8時間稼動)当たり500個
・加工賃@50円、月25日稼動
売上予測(1ヵ月)=50円×500個×2台×25日=125万
(2) 販売業で店舗売りのウェイトが大きい業種(コンビニエンスストアなど)
〈算式〉 1㎡(または1坪)当たりの売上高 × 売場面積
[例2] 業種:コンビニエンスストア
・売場面積 100㎡
・1㎡当たりの売上高(月間) 16万円
(「小企業の経営指標」による業界平均から算出)
売上予測(1ヵ月)=16万円×100㎡=1,600万円
(3) 飲食店営業、理容業、美容業などサービス業関係業種
〈算式〉 客単価 × 設備単位数(席数) × 回転数
[例3] 業種:理髪店
・理髪椅子 2台
・1日1台当たりの回転数 4.5回転
・客単価 3,950円、月25日稼動
売上予測(1ヵ月)=3,950円×2台×4.5回転×25日=88万円
(4) 労働集約的な業種(自動車販売業、化粧品販売業、ビル清掃業など)
〈算式〉 従業者1人当たり売上高 × 従業者数
[例4] 業種:自動車小売業
・従業者 3人
・従業者1人当たりの売上高(月間) 256万円
(「小企業の経営指標」による業界平均から算出)
売上予測(1ヵ月)=256万円×3人=768万円
※1㎡当たりの売上高や従業者1人当たりの売上高などについては、「小企業の経営指標」(日本政策金融公庫総合研究所編)などで調べることができます。
上野光夫書籍は、日本政策金融公庫が公開している売上高等の計算方法についてという参考資料は、顧客数の視点が欠如していると指摘しています
上野光夫「事業計画書は1枚にまとめなさい」(2019年第2刷)p207より、「しかし実際にこうした算式で予測しても融資担当者に納得してもらえないと断言します。一見、合理的な算出方法に見えますが、顧客数の視点が欠如しているからです。商品・サービスを購入するお客様の見込みを示さないで、生産能力や人的生産性だけで予測しても説得力に欠けます。業態を問わず、顧客数の観点を盛り込んだ説得力ある予測を示せるのは、客単価×客数というシンプルな方法です」とあります。
弊所はまず、当該意見に同意します。そして下記で詳細を分析します。
・(部品製造業、印刷業、運送業など)〈算式〉 設備の生産能力 × 設備数について
設備の生産能力と稼働日数から算出しているだけということで、まずなぜ受注できるのか説明不可能と解されます。
・販売業で店舗売りのウェイトが大きい業種(コンビニエンスストアなど)〈算式〉 1㎡(または1坪)当たりの売上高 × 売場面積について
1㎡当たりの売上高(月間) を「小企業の経営指標」による業界平均を利用して面積を乗じたとしても、まずなぜその業界平均の売上が見込めるのかが説明不可能と解されます。
・飲食店営業、理容業、美容業などサービス業関係業種〈算式〉 客単価 × 設備単位数(席数) × 回転数について
設備単位数(席数) × 回転数=客数なので、 客単価 ×客数、とすればよいと解されます。あとはなぜその客数が見込めるのかを説明すべきと解されます。
・労働集約的な業種(自動車販売業、化粧品販売業、ビル清掃業など)〈算式〉 従業者1人当たり売上高 × 従業者数について
従業者1人当たりの売上高(月間)を小企業の経営指標による業界平均を利用して従業員数を乗じたとしても、まずなぜその業界平均の売上が見込めるのかが説明不可能と解されます。
中嶋政雄書籍についても、客数について言及されているため、同意します。
・中嶋政雄ほか「開業とお金の不安が無くなる美容室開業の教科書」(2017年)p103より、「売上高は、平均客単価×セット面の数×稼働日数で計算されます」とありました。しかしながら当該書籍p103において「セット面と回転数で決まる客数についてはお店の立地、駐車場の数、集客の方法の選択で予測が可能です」と、客数はあくまで集客の方法によると言及している点に同意します。
その他の書籍は、日本政策金融公庫が公開している売上高等の計算方法についてという参考資料の考え方に同意しているように解されます
しかしながら、その他の書籍については、日本政策金融公庫が公開している売上高等の計算方法についてという参考資料の考え方に同意しているように解されます。
・西内孝文監修「融資を引き出す創業計画書つくり方・活かし方」(2017年)p94-p95において、日本政策金融公庫が公開している売上高等の計算方法についてをそのまま引用しているように解されます。
・小松崎哲史ほか「始めの一歩を踏み出す前に開業のための手続き完全マニュアル」(2016年)p31より、「日本政策金融公庫のwebサイトでダウンロードできる「小企業の経営指標」で、従業者1人当たり売上高や店舗面積3.3㎡当たり売上高の業種ごとの平均値を調べることができます」とあります。
・大野晃ほか「繁盛する飲食店が必ずやっている開業資金の調達方法」(2015年)p26-p27より、「開業当初の最低売上基本パターンを曜日別に計算して(客単価×席数×実質稼働率×回転数)、月別に季節変動を考慮して売上を計算して」とあります。
ネット記事の多くも、日本政策金融公庫が公開している売上高等の計算方法についてという参考資料の考え方に同意しているように解されます
ネット検索で「創業融資 売上根拠 算出」と検索いただくと、上記の日本政策金融公庫が公開している売上高等の計算方法についてという参考資料をそのまま引用したような記事ばかり見受けられます。
予測売上高の決定方法は、客単価×客数というシンプルなものと解されます
ここからは弊所の独自の考えも取り込んでいます。
席数×回転数=客数
という算式ですが、回転数というのがよくわからない、あくまで結果論と解されます。つまり、
斯業経験に基づく一日これくらい客が来るだろうという客数=○○人=そうすると自身の店の席数は○○席だから、結果として○○回転した、というのはわかりやすいと解されます。
したがって、斯業経験に基づく一日これくらい客が来るだろうという客数が最も大切である、と解されます。
しかしさらに弊所独自の視点として「その客数がなぜその客数なのか」を証明すべきという考えを有しています
しかしながら、斯業経験に基づく一日これくらい客が来るだろうという客数はあくまで勤務時代における店舗の経験に基づく想像の客数、となりご自身が創業する事業の客数にそのまま転用することは理屈が合わないことになります。
ご自身が創業する事業について根拠のある見込み来客数を示さなければならないとなります。
集客数計画書については、こちらのページをご参考ください。
まとめ
・日本政策金融公庫が公開している売上高等の計算方法についてという参考資料をそのまま利用することには疑問が生じます。
・予測売上高の決定方法は、客単価×客数というシンプルなものと解されます。