黒字倒産という言葉を聞いたことがありますか?
一度は黒字倒産という言葉を聞いた方がおられるかもしれません。その名の通り、損益計算書においては黒字つまり利益が出ているにも関わらず、キャッシュアウトつまり現金が尽きてしまったがために事業が廃業・倒産することを言います。
そんな現象は実際に発生するのか?と疑問に思われる方がおられると思いますので具体例で示したいと思います。わかりやすい事例にするために数字は極端なもので設定しています。
①自己資金0円で借入金1,000万円で開業した。
②設備資金として800万円支出した。
③売上は900万円、仕入は700万円
④借入金元本返済期間は2年のため初年度返済金額は500万円(非現実的ではありますが)
この場合の予測損益計算書は下記のようになります。
1年目仕訳 | |||
---|---|---|---|
現金 | 10,000,000 | 長期借入金 | 10,000,000 |
建物付属設備 | 8,000,000 | 現金 | 8,000,000 |
現金 | 9,000,000 | 売上 | 9,000,000 |
仕入 | 7,000,000 | 現金 | 7,000,000 |
長期借入金 | 5,000,000 | 現金 | 5,000,000 |
1年目予測損益計算書 | |||
売上 | 9,000,000 | ||
仕入 | -7,000,000 | ||
利益 | 2,000,000 |
利益が200万円出ているため、倒産とは無縁のように思われます。しかしここで資金繰り表を見てみましょう。
資金繰り科目名称 | 令和 2年12月度(実績) |
---|---|
前月繰越 | 0 |
収入 | |
現金売上 | 9,000,000 |
借入金 | 10,000,000 |
収入 合計 | 19,000,000 |
支出 | |
現金仕入 | 7,000,000 |
借入金返済 | 5,000,000 |
固定資産購入 | 8,000,000 |
支出 合計 | 20,000,000 |
翌月繰越 | -1,000,000 |
上記の資金繰り表では翌期繰越金額が▲100万円となっています。利益がマイナスの場合でも事業が継続できることはありますが、資金繰り表がマイナスで事業が継続することは不可能です。つまり倒産ということになります。
原因は損益計算書P/Lしか作成していないからです!
なぜこのような予測の資金繰り表が完成したのでしょうか?それは予測損益計算書いわゆるP/Lしか作成していないため、現金の残高を把握していなかったためです。
資金繰り表は会計ソフトで作成をオススメします
会計ソフトの良いところは
・損益計算書P/L
・貸借対照表B/S
・資金繰り表
の3つが連動して作成します。会計ソフトでの作成をオススメします。
もちろんエクセルでも作成できます。しかし、エクセルは上記3つを別々に作成すると思います。従いまして一か所修正すると手作業で3つを連動させて修正しなければいけません。
オススメの会計ソフトはみんなの青色申告です(個人事業主のみ:法人は非対応)
定価は9,800円+税ですが、実際は8,000円程度で購入できる場合が多いようです。
またもちろんですが、実際に起業開業後の確定申告にも使用できるので購入しておいて損は無いと思います。
法人で開業される場合は「会計王」ですが4万円ほどします。
売掛金が発生するビジネス商売も黒字倒産に気を付けましょう!
開業する場合の創業計画書、事業計画書において売掛金を経由して現金を回収するビジネスモデルがあると思います。
例えば、建築業やプログラマーのアプリソフトウェア開発業などは工事進行基準の考え方で売り上げを計上する場合、予測損益計算書P/L上では黒字であってもそれは売掛金によるものであり現金回収が遅れるというケースがあります。
また、飲食店であってもクレジットカード決済を中心としてしまうと現金の回収が2カ月遅れなどになり資金繰りが悪化します。これも黒字倒産となる原因ですのでやはり資金繰り表が重要であることがわかります。