(2017年11月8日作成)(2024年5月27日再編集)

結論

・経営実績の存在しない者が誰かから融資を受けるということは相当困難な、そもそも無茶な話である、ということの再認識をお願いいたします。
・しかし経営実績が存在しなければ融資はできないというルールであれば、起業、開業、独立、創業の可能性を否定することになります。
・経営実績が存在しない者に貸付けるという挑戦的な行為は、国(税金)の後ろ盾があることで可能な行為であり、民間金融機関が消極的であることについて責めることは酷であると解されます。

下記で詳細を記述します。

経営実績の存在しない者が誰かから融資を受けるということはそもそも無茶な話です

「お金の貸し借りはしたくない」という意見は重々承知しておりますが、あなたがもしお金を貸すとして、下記の2名がお金を借りにきたとします。

・これまで経営実績が一切なく、損益計算書や貸借対照表といった決算書が存在せず、これから起業、開業、独立、創業予定のAさん
・既に事業開始後で、損益計算書や貸借対照表といった決算書を有しているBさん

あなたはどちらにお金を貸すでしょうか。お金を貸すかどうかの検討に値するのがBさんであり、Aさんは論外という感想ではないでしょうか。当然と思います。なぜなら、Aさんがいくら創業計画をプレゼンしたところでそれは単なる青写真を描いているにすぎません。

以上から、経営実績の存在しない者が誰かから融資を受けるということはそもそも無茶な話であるということの理解、再認識をよろしくお願いいたします。

しかし経営実績が存在しなければ融資はできないというルールであれば創業の芽を摘むことになります

しかし、実績が存在しないから否定するということは良いことなのでしょうか。例えば、大学受験において○○大学合格を目指して勉強する、という人に対して合格できるかどうかわからないから塾や家庭教師や予備校代は出せない、合格ができるという前提であれば出す、ということはあまりにもひどい話であるとも言えると思います。

そうすると、返済されない可能性もあるが、起業家、創業者の挑戦を、資金融資の面から支援してくれる存在が必要ということになります。お金、融資、といった非常にシビアかつデリケートなものにおいてそのような支援してくれる存在はいるのでしょうか。

その存在が日本政策金融公庫(次いで信用保証協会)と解されます。

経営実績が存在しない者に貸付けるという挑戦的な行為は、国(税金)の後ろ盾があることで可能な行為と解されます

国(税金)の後ろ盾がある組織となれば、株式会社日本政策金融公庫及び信用保証協会となります。

・株式会社日本政策金融公庫とは、株式会社とは言ううもののそのすべての株の株主は国であり、株式会社日本政策金融公庫の財源は平たく言えば税金となります。
・信用保証協会は、信用保証協会法(昭和28年8月10日法律第196号)に基づき、中小企業・小規模事業者の金融円滑化のために設立された公的機関です。公的機関ということで財源は平たく言えば税金となります。

そして日本政策金融公庫は、国の政策、国の考えに連動することとなります。2013年政府の成長戦略として、開業率を現状の4.6%から欧米並みの10%に引き上げることが目標として明記されました。したがって「実績が無いから融資できない」という考えでは10%には到達しません。つまり、貸付金の貸倒を恐れず、積極的に融資することを国から命令されているとも言えます。しかしながら、ここは賛否両論ですが、もし仮に貸付金の貸倒が発生した場合には、財源は税金ということで国民の遠いところで国民が負担しているということになります。

信用保証協会も「積極的に保証人となり融資を受けやすくする」という観点から融資を活発にしようとする観点から、日本政策金融公庫と同じ方向性となります。同様に、財源は税金ということで国民の遠いところで国民が負担しているということになります。

一方で、民間金融機関は、金融庁という国の機関から様々なお達しや制約を課されるものの、運営、経営については営利目的ですので、一般の企業や事業者と同様に、利益を追求していくことになります。もし仮に融資の貸倒が発生した場合は、その損失は当然その民間金融機関が被ることになります。創業融資に対して、消極的、懐疑的、になるのも仕方ない話なのかもしれません。

まとめ

経営実績が存在しない者に貸付けるという創業融資は特別かつ異例であるため、民間金融機関ではなく、国の組織を頼ること、国の支援を受けること、という意味で日本政策金融公庫を頼ることは当然と解されます。