(2020年1月9日作成)(2024年6月4日再編集)

結論

・予測売上高の決定方法は、客単価×客数というシンプルなものと解されますが、当該客数の根拠が必要と解されます。
・創業融資が厳しくなってきているというネット情報があり、当該根拠を示すことは強みとなります。
・実際に月別収支計画書の書式が売上根拠を求めているようにみえます。
・実際に過去の創業計画書記入例を比較するとどのように集客するのか売上の根拠を求めているように見えます。
・書籍においても売上の根拠となる資料を準備すべきという記述が存在します。
・ただ、書籍やその他の情報を参考にしてもやはり見込み集客数の根拠を示すということは相当困難と解されます。
・あくまで弊所独自に考えた集客数の根拠は、立地集客、チラシ集客及びネット集客は反応率としてそれらを総合する、となりました。
・根拠のある客数を月別収支計画書に転記して記述しましょう。

下記で詳細を記述します。

予測売上高の決定方法は、客単価×客数というシンプルなものと解されますが、当該客数の根拠が必要と解されます

こちらのページをご参考ください。

日本政策金融公庫が公開している売上高等の計算方法についてという参考資料を鵜呑みにしないようご注意ください

当該ページで説明したことは下記となります。

・予測売上高の決定方法は、客単価×客数というシンプルなもの
・斯業経験に基づく一日これくらい客が来るだろうという客数はあくまで勤務時代における店舗の経験に基づく想像の客数、となりご自身が創業する事業の客数にそのまま転用することは理屈が合わないことになる
・ご自身が創業する事業について根拠のある見込み来客数を示さなければならない。

ということを説明しました。

創業融資が厳しくなってきているというネット情報があり、当該根拠を示すことは強みとなります

最近のネット情報において、創業融資の審査が厳しくなってきているとの記述があり、その内容としては、「もう少し売上の根拠を明確にしないと融資できないという審査結果だった」というものでした。

売上の根拠、つまり集客の根拠が求められる時代だと解されます。

実際に月別収支計画書の書式が売上根拠を求めているようにみえます

(図1)月別収支計画書書式売上達成に向けた具体的な取り組み

実際に、2018年頃に改訂された月別収支計画書書式において売上達成に向けた具体的な取り組みという項目が出現しております。

実際に過去の創業計画書記入例を比較するとどのように集客するのか売上の根拠を求めているように見えます。

過去の創業計画書記入例における販売戦略欄の記述比較2018年以前2019年以後
洋風居酒屋・30~40代の○○地区周辺の会社員がメインターゲット。・30~40代の○○地区周辺の会社員がメインターゲット。
・創業当初は、駅前でのチラシ配りやポスティングにより、新規顧客の獲得を図る。
・写真映えする創作料理をインスタグラムなどのSNSに投稿し、認知度向上を図る。
美容業・現勤務先で固定客約200人を中心に、口コミなどで顧客層を広げる・現勤務先で固定客約200人あり。
・創業当初は、駅前でのチラシ配りやポスティングにより、新規顧客の獲得を図る。
・固定客からの口コミに加え、インスタグラムなどのSNSも利用し、認知度向上を図る。
中古自動車販売業新旧に差異無し新旧に差異無し
婦人服・子供服小売業・子育て世代の30代前後の女性がメインターゲット。
・子育て世代の30代前後の女性がメインターゲット。
・親子でのコーディネート例等、商品の情報をSNSで積極的に発信する。
ソフトウェア開発業新旧に差異無し新旧に差異無し
内装工事業新旧に差異無し新旧に差異無し
学習塾・○○駅周辺の学生のほか、近隣住民も取り込むため、チラシやポスティングを用いて集客を図る。
・○○駅周辺の学生のほか、近隣住民も取り込むため、チラシやポスティングを用いて集客を図る。
・初回授業料無料(お試し体験)や友達紹介キャンペーンなどにより、新規顧客獲得を図る。
歯科診療所・○○駅を利用する会社員向けに夜間診療をするなど差別化を図る。・○○駅を利用する会社員向けに夜間診療をするなど差別化を図る。
・創業当初は、駅前でのチラシ配りや開業キャンペーンなどにより、新規顧客獲得を図る。
介護サービス・○○駅周辺にお住まいの要介護者
・○○駅周辺にお住まいの要介護者
・創業当初は、駅前でのチラシ配りやポスティングにより、新規顧客獲得を図る。

(表1)過去の創業計画書記入例における販売戦略欄の記述比較

上記の表の分析結果は下記となります。

・洋風居酒屋、美容業、婦人服・子供服小売業、についてはSNSやネットブログで集客することが見本として記述されているため、SNSは当然としてするものというようなメッセージを感じます。
・学習塾、歯科診療所、介護サービス、については新規顧客に向けてのキャンペーンすることが見本として記述されているため、新規顧客獲得する努力をしなさいというようなメッセージを感じます。

書籍においても売上の根拠となる資料を準備すべきという記述が存在します

上野光夫「事業計画書は1枚にまとめなさい」(2019年第2刷)p238より下記の記述です。

持参する資料の中でもっとも頭を悩ませるのが「売上予測の根拠となる資料」でしょう。創業計画書の「事業の見通し」には、なんとか売上予測を書いたものの、その根拠を示すのは難しいという方がほとんどです。
でもそこであきらめてはいけません。また「資料はないから口頭でなんとか説明しよう」とするのも得策ではありません。

上野光夫「事業計画書は1枚にまとめなさい」(2019年第2刷)p239より下記の記述です。

そこで審査において有効に働くと考えられる資料についていくつか例を挙げたいと思います。
「飲食業」
・開業予定地周辺をターゲットとする顧客層の概数
・開業予定地周辺にある大企業の従業員数
・ほかの地域に立地する類似業態店の来店客数
・テストマーケティング(知人の飲食店で出してみるなど)の結果

とあります。

中嶋政雄ほか「開業とお金の不安が無くなる美容室開業の教科書」(2017年)p218-p219より下記となります。

事業計画に使った客単価、客数を、融資担当者に客観的に説明することができれば問題ありません。大切なのは、自分の思い込みではなく「客観的な根拠」です。(省略)オープンしたら、ホームページやインスタやフェイスブックなどのSNSで集客しようと思います。チラシを作って自分で配ろうと思います。折込チラシや地域雑誌にも掲載しようと思います。こういった抽象的な表現ではなく、オープン時には、ホットペッパービューティーと地域雑誌○○に掲載し、折込チラシも○○地域に△部配布します。手作りチラシは、○○駅のターゲット層がよく通過する時間帯に△部配布したり、ポストの中にチラシを投げ込むだけでなく、一軒一軒声掛けします。などなど、
売上=客数×客単価
事業計画を立てる際は、この掛け算の根拠について、美容業を知らない人にもわかりやすく、かつ具体的に説明できれば、事業計画の信頼性はより高くなります。

ただ、書籍やその他の情報を参考にしてもやはり見込み集客数の根拠を示すということは相当困難

上記で検討しましたが、結局売上高の根拠となる、客数を示す資料を作成することは困難であると解されました。

・youtubeの登録者数が100万人いるから新商品をその0.1%である1,000個は確実に売れる

このようなわかりやすい根拠が望まれます。あくまで弊所独自の見解を下記で記述します。

店舗の立地について

・西内孝文監修「融資を引き出す創業計画書つくり方・活かし方」(2017年)p81より、とくに店舗を設けて販売する場合は立地がすべてと考えることもできます、と記述がありました。

・中嶋政雄ほか「開業とお金の不安が無くなる美容室開業の教科書」(2017年)p227より、必ず生存するお店を作るためには、美容室の立地から慎重に判断することがとても重要です、と記述がありました。

チラシ集客について

書籍等において言及はありません。

チラシ配布枚数×反応率

しかし、上記の算式は全く根拠にならないわけではないと解され、有効と思われます。

SNS集客について

書籍等において言及はありません。

SNSフォロワー数×反応率

しかし、上記の算式は全く根拠にならないわけではないと解され、有効と思われます。

あくまで弊所独自に考えた集客数の根拠は、立地集客、チラシ集客及びネット集客は反応率としてそれらを総合する、となりました

これまでの検討をまとめますと下記です。

①立地集客による見込み集客数
②チラシ集客による見込み集客数
③SNS集客による見込み集客数

①~③の合計数を見込み客数とする。

根拠のある客数を月別収支計画書に転記して記述しましょう

(図2)根拠のある客数を月別収支計画書に転記して記述

上記の算出根拠を示して月別収支計画書に客数、売上を記述しましょう。