(2024年7月30日作成)

結論

・創業融資においては、創業融資申請者=斯業(しぎょう)経験者=自己資金所有者が原則であり、その他の場合は特例扱いとなると解され、場合によっては申請不可と解されます。
・根拠は、ネット記事及び書籍並びに公庫窓口の回答となります。
・実際に、創業計画書における経営者の略歴等や取得資格の欄が書けない、書きにくいとなると解されます。
・少なくとも創業融資申請者=斯業(しぎょう)経験者は必須であるため、創業融資申請者=斯業(しぎょう)経験者に資金を贈与・貸付けるという選択肢が存在すると解されます。

下記で詳細を記述します。

創業融資においては、創業融資申請者=斯業(しぎょう)経験者=自己資金所有者が原則と解されます

みなさんが創業融資と聞いてイメージするパターンは下記ではないでしょうか。

・料理屋で長年働いた料理人Aが創業融資を申請して創業した
・美容室で長年働いた美容師Aが創業融資を申請して創業した
・ネイルサロンで長年働いたネイリストAが創業融資を申請して創業した

となります。しかし、世の中のお店において下記のような文言を聞いたことはないでしょうか。

・この店の店長は雇われ店長で、店長のほかに違うオーナーがいるらしいよ

という文言です、具体例は下記となります。

・個人事業主オーナーXが、店長Aを雇用しているバー
・株主オーナーXが設立した法人会社Yが、代表取締役Aを雇っているイタリアンレストラン

このようなケースは、「経営形態としてはまったく特異なケースではない」となります。しかし、創業融資という観点からは原則的な審査ケースからははずれる、と解されます。

当該ケースの問題点は、オーナーXと経営代表者Aが喧嘩別れしないことが大前提となっている脆い創業計画であること、となります。

当該論点についてのネット記事

当該論点について弊所がネット検索による研究を行ったことにより抱いた感想としては「根本的かつ大前提の重要な論点のはずだが意外とドンピシャに解説しているネット記事は少ない」という印象でした。弊所の検索結果は下記となります。

申し込みを行う代表者本人に事業経験が無いと融資評価がマイナスとなります、という書き方で言及されたネット記事

当該言及は、上記の例で言えば、個人事業主オーナーXが、店長Aを雇用しているバー、となります。

株式の大部分を社長以外の人が持っている会社は創業融資を受けることができない、という書き方で言及されたネット記事

当該言及は、上記の例で言えば、株主オーナーXが設立した法人会社Yが、代表取締役Aを雇っているイタリアンレストラン、となります。理由の記述内容は下記となります。

社長を解任する権利は、50%を超える株式を有する株主が持つことになります。金融機関側は社長を信用して、融資を行います。株主によって、その社長が解任されてしまうと、信用した根拠が無くなるためである、とありました。

代表が1株も持っていない状態での信用金庫からの融資は厳しく、日本政策金融公庫であっても融資のハードルはグッと上がる、という書き方で言及されたネット記事

当該言及は、上記の例で言えば、株主オーナーXが設立した法人会社Yが、代表取締役Aを雇っているイタリアンレストラン、となります。理由の記述内容は下記となります。

・会社代表が1株も持っていない融資というのは、通常想定されているパターンではない
・たとえ能力を評価して融資実行の判断をしたとしても、代表が出資者でなければ(50%以上の議決権をもっていなければ)、業績悪化によっては解任されてしまう可能性があり、積極的な創業融資を受けるのは難しい

とありました。

当該論点についての書籍の記述

・中野裕哲「起業で使える事業計画書の作り方」(2017年初版第2刷)p82の記述

別の観点から考えるべきなのは、創業融資の審査を突破するという観点です。だれが代表者になるかによっては、創業融資の審査基準を満たせない可能性があるからです。前述のように、創業融資の審査基準では、代表者の経験・能力、自己資金が重要な要素となっています。代表者には全く貯金が無いケース、これから始めようとしている事業の経験が全くないケース、信用情報にキズがあるケースなどでは、審査基準を満たすことは厳しくなります。代表者になる予定の人が、これらの点で何か問題があるのであれば、ほかの人が代表者になることも視野に入れるべきです。

・上野光夫「事業計画書は1枚にまとめなさい」(2019年第2刷)p267の記述

(こんな残念な起業家にはなってはいけないという段落において)自分にノウハウが無いことを公言する人、例えば飲食店開業を予定している人で、「自分にはまったくノウハウがないので、シェフや店長に任せる」と公言する人がいます。たとえ実態はそうでも、経営者としての資質のなさをアピールするようなものです。

日本政策金融公庫窓口の回答

日本政策金融公庫の窓口へ質問した回答は下記となりました。

・創業融資申請者=斯業(しぎょう)経験者=自己資金所有者が原則である
・そうでない場合の解決方法について、明確な解決方法はなく、総合的に見て判断する

ということでした。

実際に、創業計画書における経営者の略歴等や取得資格の欄が書けない、書きにくい

創業計画書における経営者の略歴等という項目は、創業融資申請者の略歴を記述することになります。

・創業融資申請者=斯業経験者=経営者の場合、まさにご自身の略歴を記述すれば合致することになります。
・しかし、創業融資申請者A、斯業経験者B、AはBを雇う前提、という創業計画の場合、Aの略歴を記述しても、実務経験が事業計画内容と合致しない場合が発生します。

取得資格の欄はさらに顕著となります。

創業融資申請者=斯業(しぎょう)経験者=自己資金所有者ではない特例ケースの場合の解決方法について弊所独自の見解

ネット記事、書籍、公庫の窓口ですが、いずれも注意喚起はあるものの、解決方法の明示はありませんでした。では、解決方法をどうするか、弊所独自に研究します。

・斯業(しぎょう)経験を移動させることや斯業(しぎょう)経験を慌てて積むことはできないが、資金は贈与や貸付けが可能である

このことは紛れもない事実となります。そうすると解決策は下記となるでしょう。

・創業融資申請者=自己資金所有者=A
・斯業(しぎょう)経験者=B
・AはBを雇用することを前提とした創業計画を立てている

この場合は

・Aの自己資金をBに贈与又は貸付をする、できれば贈与のほうが強い証明となる
・そして、創業融資申請者=自己資金所有者=斯業(しぎょう)経験者=Bとする
・AはBに雇用されるなどする

このようにすることが望ましいと解されます。しかし反論意見として下記が考えられます。

・Bを創業融資申請者とできない理由があるから今回の計画となっている

そもそもBが創業融資申請者となれるのであれば初めからそうしている可能性が高いと思われます。どうしてもBを創業融資申請者とできないのであれば、当初通りにAを創業融資申請者として、AとBの関係が強固であることを証明していくことになると解されます。

まとめ

つまり、斯業(しぎょう)経験者以外が創業融資申請者となるケースは創業融資の成功率が厳しくなり、また明確かつ簡単な解決方法は存在しない、と解されます。