(2018年8月3日作成)(2024年5月30日再編集)

結論

・個人事業主で創業するのか法人で創業するのかについて調べるとごちゃごちゃします。
・どちらで創業したほうが税負担が低いかを調べがちですが、まずは無視しましょう。
・創業融資の無限責任か有限責任の観点、税務申告の自力申告可能性の観点、に着目すべきと解されます。
・近年の流れを考えると、法人で創業のメリットが高まっていると解されます。

下記で詳細を記述します。

個人事業主で創業するのか法人で創業するのかについて調べるとごちゃごちゃします

「創業 個人 法人 どちら」などで検索をお願いします。すると、

・開業設立の手間の観点
・社会的信用の観点
・経費の範囲が広がる観点
・税金の観点
・社会保険の観点

などごちゃごちゃした説明が記述されているため混乱すると解されます。確かにすべてを理解することも重要ですが、弊所はあえて簡便な説明でわかりやすさを重視します。

・創業融資の無限責任か有限責任かの観点
・税務申告の自力申告可能性の観点
・開業設立の手間の観点

に絞って、ご説明します。

創業融資の無限責任か有限責任かの観点

概要

こちらのページをご参考ください。

無限責任である個人事業主の無担保無保証人融資と有限責任である法人の無担保無保証人融資の違いについて
無限責任である個人事業主が信用保証協会を利用する場合と有限責任である法人が信用保証協会を利用する場合の違いについて

上記の内容を完結にまとめますと下記です。

・個人事業主の融資は無担保無保証人でも無限責任となります
・法人の融資は無担保無保証人経営者保証無しで審査が通れば有限責任で済みます

したがって、融資リスクの観点からは法人で創業が優位性があります。

具体例でお伝えします。

・自己資本300万円、生活費貯金300万円、無担保無保証人融資300万円で個人事業主で創業したA
・自己資本300万円、生活費貯金300万円、無担保無保証人代表者保証無し融資300万円で法人で創業したB
・A、Bいずれも返済不能となりました。

この場合の結果は、

・Aは生活費貯金300万円から融資300万円を返済していくことになります
・Bは返済不能で終了となり、生活費貯金300万円は無関係となります。

法人が無担保無保証人融資が返済不能となった場合、いわゆる踏倒しの場合のデメリットは?

上記で踏倒したBのデメリットは下記となります。

・Bの信用情報が、日本政策金融公庫、信用保証協会、民間金融機関で共有されることになります。
・Bは今後、創業融資、個人住宅ローンの借入れ、新規でのクレジットカードのお申込みなど、Bの今後の人生におけるローンというものがすべて困難となる可能性が高いです。

税務申告の自力申告可能性の観点

財務省のデータによりますと

・個人事業主の税理士関与の割合は20%
・法人の税理士関与の割合は90%

となっております。以上から「税理士報酬を支払いたくない、自分で税務申告をしたい」という前提であれば個人で創業することに優位性があります。

開業設立の手間の観点

法人の設立に関する改正を下記でまとめます。

・平成2年の商法改正まで、株式会社の設立には、7人以上の発起人が必要でした。 つまり、7名以上の株主が必要でしたが、1名でよいことになりました。
・平成18年(2006年)5月1日施行の会社法により、旧制度では有限会社は最低300万円、株式会社は最低1,000万円必要とされていた資本金(最低資本金制度)が撤廃され1円でも設立可能となりました。また新たな会社の類型として、合同会社が設立可能となりました。

以上より、平成18年以降は法人設立に関してのハードルは下がっています。

開業、起業、創業者の開業当初の経営形態の選択

開業時の経営形態個人企業(%)法人企業(%)
2020年度新規開業実態調査61.638.4
2021年度新規開業実態調査61.338.7
2022年度新規開業実態調査60.539.5
2023年度新規開業実態調査60.439.6

(表1)開業当初の経営形態

個人で開業が60%
法人で開業が40%

となりました。上記の理由について弊所独自に分析しました。

・個人事業主は無限責任、法人は有限責任、そのリスクの違い、についての情報や考え方が世間に浸透していない
・法人を設立することがとにかくややこしい、法人税務申告は税理士が必要で費用が高いらしい、という考えのほうが浸透している
・以上から個人事業主のほうが簡単そうだから

ということで60%を占めていると解されます。

まとめ

近年の流れを考えると、法人で創業のメリットが高まっていると解されます。