(2018年6月18日作成)(2024年5月30日再編集)

結論

・信用保証協会の募集要項における、「連帯保証人・個人は原則不要。法人は必要となる場合があります。ただし、法人代表者以外の連帯保証人は原則不要です。」の意味がわからず混乱すると思われます。
・信用保証協会は「民間金融機関に対する保証人」になってくれます。返済不能により信用保証協会が代位弁済した場合は求償権が発生し、信用保証協会から債務者への請求となり、信用保証協会が債務者から回収できないと信用保証協会の貸倒となります。したがって、信用保証協会が信用保証協会に対する保証人を求める、ということとなります。
・しかし、第三者の保証人はすでに禁止されています。また経営者保証無しが推し進められています。
・さらに、保証料を上乗せして経営者保証無しとする制度なども整備され始めています。
・日本政策金融公庫で無担保無保証人融資をうけることと、個人で信用保証協会付融資をうけること及び法人で経営者保証無しで信用保証協会付融資をうけること、はリスクのレベルという観点からではほぼ同じと言えると解されます。

下記で詳細を記述します。

信用保証協会の募集要項における、「連帯保証人・個人は原則不要。法人は必要となる場合があります。ただし、法人代表者以外の連帯保証人は原則不要です。」の意味がわからず混乱する

信用保証協会は保証人になってくれる、という文言は有名であり、ああよかった保証人を用意しなくていいんだと安心するかと思います。しかし、信用保証協会の融資の募集要項などをみると

「連帯保証人・個人は原則不要。法人は必要となる場合があります。ただし、法人代表者以外の連帯保証人は原則不要です。」

という文章が散見されます。

・個人は原則不要←信用保証協会に対する保証人は不要?そらそうでしょう?
・法人は必要となる場合←信用保証協会に対する保証人が必要になる場合?よくわからない?
・ただし法人代表者以外の連帯保証人は原則不要←保証人は必要だけど代表者以外は原則不要?よくわからない?

となると解されます。

信用保証協会の募集要項における連帯保証人、個人は原則不要の意味について

第三者保証人や経営者保証の歴史改革内容日本政策金融公庫(政府系)信用保証協会(政府系)民間金融機関
~平成18年(2006年)3月31日・個人事業主、第三者保証人は存在していたと思われる
・法人
◎第三者保証人は存在していたと思われる
◎経営者保証無しの割合、不明
・個人事業主、第三者保証人は存在していたと思われる
・法人
◎第三者保証人は存在していたと思われる
◎経営者保証無しの割合、不明
・個人事業主、第三者保証人は存在していたと思われる
・法人
◎第三者保証人は存在していたと思われる
◎経営者保証無しの割合、不明
平成18年(2006年)3月31日中小企業庁通達、信用保証協会における第三者保証人徴求の原則禁止。政府系金融機関では、例外的な対応を除いて第三者からの保証人徴求は行っていない。
平成18年(2006年)3月31日~平成23年(2011年)7月14日・個人事業主、第三者保証人の原則禁止
・法人
◎第三者保証人の原則禁止
◎経営者保証無しの割合、不明
・個人事業主、第三者保証人の原則禁止
・法人
◎第三者保証人の原則禁止
◎経営者保証無しの割合、不明
・個人事業主、第三者保証人は存在していたと思われる
・法人
◎第三者保証人は存在していたと思われる
◎経営者保証無しの割合、不明
平成23年(2011年)7月14日金融庁は、金融機関が企業へ融資する際に、経営者以外の第三者の個人連帯証を求めないことを原則とする旨の監督指針の改正
平成23年(2011年)7月14日~平成26年(2014年)2月1日・個人事業主、第三者保証人の原則禁止
・法人
◎第三者保証人の原則禁止
◎経営者保証無しの割合、不明
・個人事業主、第三者保証人の原則禁止
・法人
◎第三者保証人の原則禁止
◎経営者保証無しの割合、不明
・個人事業主、第三者保証人の原則禁止
・法人
◎第三者保証人の原則禁止
◎経営者保証無しの割合、不明
平成26年(2014年)2月1日これらの課題の解決策として、全国銀行協会と日本商工会議所が「経営者保証に関するガイドライン(以下、「ガイドライン」とする)」を策定した(平成25年12月5日公表、平成26年2月1日適用開始)経営者保証に依存しない融資の一層の促進が明記された
平成26年(2014年)2月1日~令和4年(2022年)12月23日・個人事業主、第三者保証人の受付停止
・法人
◎第三者保証人の受付停止
◎経営者保証無しの割合19%
・個人事業主、第三者保証人の受付停止と思われる
・法人
◎第三者保証人の受付停止と思われる
◎経営者保証無しの割合、不明
・個人事業主、第三者保証人の原則禁止
・法人
◎第三者保証人の原則禁止
◎経営者保証無しの割合12%
令和4年(2022年)12月23日経済産業省、金融庁、財務省、経営者保証改革プログラム。金融庁は、経営者保証に依存しない融資慣行の確立を更に加速させるため、経済産業省・財務省とも連携の下、「経営者保証改革プログラム」を策定しました。・個人事業主、第三者保証人の受付停止
・法人
◎第三者保証人の受付停止
◎経営者保証無しの割合52%
・個人事業主、第三者保証人の受付停止と思われる
・法人
◎第三者保証人の受付停止と思われる
◎経営者保証無しの割合29%
・個人事業主、第三者保証人の原則禁止
・法人
◎第三者保証人の原則禁止
◎経営者保証無しの割合33%
令和4年(2022年)12月23日~令和6年(2024年)3月15日データ未取得データ未取得データ未取得
令和6年(2024年)3月15日法人である中小企業者が、一定の要件を満たした場合に、保証料率の上乗せを条件に保証人による保証を提供しないことを選択できる信用保証制度等を創設し、2024年3月15日から取扱いを開始します。データ未取得データ未取得データ未取得
令和6年(2024年)3月15日~

(表1)第三者保証人や経営者保証の歴史

上記の表を見ていただき、融資に無関係な第三者を連帯保証人とすることは平成18年から禁止されています。個人の場合は第三者を連帯保証人を連れてこなくて良いため、債務者である個人、信用保証協会、民間金融機関、で話は完結します。

信用保証協会の募集要項における連帯保証人、法人は必要となる場合があります。ただし、法人代表者以外の連帯保証人は原則不要です、の意味いについて

上記の表を見ていただき、まず融資に無関係な第三者を連帯保証人とすることは法人においても平成18年から禁止されていますが、法人代表者が法人の連帯保証人となることは通常のこととして実施されており、実際に令和4年(2022年)12月23日の発表資料においても、信用保証協会付き融資における経営者保証無しの割合は29%と低い状態です。つまり法人については、債務者である法人、信用保証協会、民間金融機関、で話は完結せず、連帯保証人としての法人代表者が登場します。

具体例でせつめいします。

・代表者Yの法人Zが信用保証協会bの保証付きで民間金融機関Bから1,000万円の融資をうけた場合で代表者Yがどこに対しても保証人とならない場合、の関係性
◎債務者→法人Z
◎債権者→民間金融機関B
◎保証人→保証協会b
上記の1,000万円が返済不能となった場合の関係性、民間金融機関Bは保証協会bから代位弁済を受け、債権者ではなくなる
◎債務者→法人Z
◎債権者(求償権)→保証協会b
その後法人Zが完全に廃業した場合、保証協会bは誰に対しても請求できなくなる。

・代表者Hの法人Iが信用保証協会cの保証付きで民間金融機関Cから1,000万円の融資をうけた場合で代表者Hが信用保証協会cの連帯保証人となる場合、の関係性
◎債務者→法人I
◎債権者→民間金融機関C
◎保証人→保証協会c
◎保証協会cの連帯保証人→代表者H
上記の1,000万円が返済不能となった場合の関係性、民間金融機関Cは保証協会cから代位弁済を受け、債権者ではなくなる
◎債務者→法人I
◎債権者(求償権)→保証協会c
その後法人Zが完全に廃業した場合、の関係性
◎債務者→代表者H
◎債権者(求償権)→保証協会c
となり、最終的な債務者は代表者Hとなります。

日本政策金融公庫で無担保無保証人融資をうけることと、個人で信用保証協会付融資をうけること及び法人で経営者保証無しで信用保証協会付融資をうけること、はリスクのレベルという観点からではほぼ同じと言える

上記の話はどこかで聞いたことがあるような話と思われたのはこちらのページと思われます。

無限責任である個人事業主の無担保無保証人融資と有限責任である法人の無担保無保証人融資の違いについて

・法人融資について
◎日本政策金融公庫が法人代表者を連帯保証人として求めること
◎信用保証協会が法人代表者を連帯保証人として求めること

ことは、ほぼ同じこと、同じ仕組み構造から発生すること、と解されます。

さらに、保証料を上乗せして経営者保証無しとする制度なども整備され始めています

これも日本政策金融公庫の法人融資における無担保無保証人融資と同じ流れとして、信用保証協会においても法人である中小企業者が、一定の要件を満たした場合に、保証料率の上乗せを条件に保証人による保証を提供しないことを選択できる信用保証制度等を創設し、2024年3月15日から取扱いを開始を始めています。

まとめ

これまでは、
・個人の信用保証協会付き融資について第三者保証人は不要であったが、そもそも個人は無限責任
・法人の信用保証協会付き融資について第三者保証人は不要であったが、経営者保証は必要で個人の無限責任と同様となり法人たる特徴が発揮できない状態であった

近年は、
・法人の信用保証協会付き融資について第三者保証人は不要かつ経営者保証も不要で有限責任となり、法人たる特徴を発揮できるような流れが推し進められています。