(2024年6月4日作成)

結論

・運転資金の「用意がどれほど必要か」ではなく「どれぐらいの金額まで融資を申請できるか」という論点であることにご注意ください。
・上野光夫書籍は「1か月当たりの仕入経費の合計額の3~4か月分まで」と述べており、弊所はその意見に同意します。
・ネット記事における「月商の3か月分を限度」という意見について、弊所は疑義を感じています。
・しかし、事業の形態により運転資金の融資を半年分以上希望することもありえるでしょう。
・さらに弊所独自の視点として、見込み仕入経費払いが先行する事業と見込み売上が先行する事業における準備すべき運転資金金額の違い、があります。

詳細を下記で記述します。

運転資金の「用意がどれほど必要か」ではなく「どれぐらいの金額まで融資を申請できるか」という論点であることにご注意ください

ネット検索で「運転資金 目安」と検索すると、月商の3か月分から6か月分という記述が散見されます。この点について下記にご注意ください。

・月商の3か月分から6か月分という売上を基準とした算式である根拠が不明です
・準備しておくべき金額であり、運転資金融資の申請額ではないということです

まずは勘違いのないようにお願いいたします。

上野光夫書籍は「1か月当たりの仕入経費の合計額の3~4か月分まで」と述べており、弊所はその意見に同意します

上野光夫「事業計画書は1枚にまとめなさい」(2019年第2刷)p197より下記の記述です。

私はよく「運転資金はどれくらいの金額まで融資が出ますか?」という質問を受けます。それに対して「通常3~4か月分ほどの原価や経費の金額までです」と回答しています。つまり「事業の見通し」で「軌道に乗った後」における原価と経費の合計額が1か月に100万円だとすると、300~400万円くらいの金額がおよその上限です。

弊所の当該意見に同意します。なぜなら、確かに売上に連動する変動経費等は見込み経費となりますが、それ以外の家賃や人件費はある程度実額を予想でき、その3~4か月分という考えに妥当性を感じるためです。

ネット記事における「月商の3か月分を限度」という意見について、弊所は疑義を感じています

ネット検索で「運転資金 創業融資 目安」と検索すると、「運転資金として借りられる金額は、一般的には月商の3か月分が目安」という記述が散見されます。しかし、弊所は当該意見に対して疑義があります。

・見込みの月商がまず予測値であり不安定です。
・その不安定な数値の3か月分の根拠がさらに乏しくなる

というのが理由となります。

事業の形態により運転資金の融資を半年分以上希望することもありえるでしょう

上野光夫「事業計画書は1枚にまとめなさい」(2019年第2刷)p197より下記の記述です。

ただし「原価・経費の3~4か月分」という運転資金の目安は業種業態によって多少異なります。これよりも少ない基準になる業種もあればもっと多くても認められるケースもあります。

弊所独自の視点として、見込み仕入経費払いが先行する事業と見込み売上が先行する事業における準備すべき運転資金金額の違い

上野光夫「事業計画書は1枚にまとめなさい」(2019年第2刷)p198より下記の記述です。

たとえば「現金商売」といわれる飲食業など回収が「即金」主体の事業は、1~2カ月分程度しか融資してくれない傾向にあります。支払いよりも先に現金が入ってくるので、それほど運転資金が必要ないと判断されるからです。一方、介護保険からの入金が主体の介護事業などの場合は、売上金の回収まで長期を要するので、場合によっては半年分など多くの融資がうけられることがあります。

しかし、弊所は上記の記述には同意できません。理由は下記です。

・売掛金の回収、買掛金の支払い、というタイムラグしか考慮していない。
・飲食業は、先に料理の材料の仕入をすることに伴う商品廃棄ロスやスタッフを採用して先にマンパワーを準備しなければならず、仕入れた材料がすぐに料理として売却されすぐに現金が回収されるという前提にのみ考えている

という点です。当該論点はこちらのページで検討します。

見込み仕入経費払いが先行する事業と見込み売上が先行する事業における準備すべき運転資金金額の違い

まとめ

日本政策金融公庫の運転資金融資申請目安限度額は、「原価・経費の3~4か月分」が妥当すると解されます。